イスラエル総選挙、出口調査では明確な勝者なし 与野党とも過半数達しない見通し

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イスラエルの総選挙(定数120、比例代表制)が27日、投開票された。複数の地元テレビの出口調査では、与野党どちらも過半数を確保できない状態となっている。今回の総選挙は、2023年10月7日にパレスチナの武装勢力ハマスが主導してイスラエルを襲撃し、それを受けてイスラエルがパレスチナ・ガザ地区の攻撃を開始して以降、初めてだった。

イスラエルの主要テレビ3社の出口調査によると、ベンヤミン・ネタニヤフ首相が率いる右派政党「リクード」と極右・宗教政党を合わせた与党陣営も、反ネタニヤフ氏で結集する野党陣営も、ともに過半数には届かない見通し。

テレビ2社は28日未明、与党陣営が51議席を獲得する一方、イスラエル軍制服組トップの参謀総長を務めたガディ・アイゼンコット氏が率いる中道新党「ヤシャル」を軸とした野党陣営も、51議席を獲得するとの予測を発表した。他方、チャンネル12は、与党陣営が52議席で野党陣営が49議席だと予測している。

アラブ系2勢力は過去最多の18~19議席を得る見通しで、この2党の動きが今後の展開を大きく左右するとみられる。

イスラエル中央選挙管理委員会によると、今年のイスラエル総選挙の投票率は、投票が締め切られた現地時間午後10時の時点で77.7%に達した。1999年以降の同時点としては最高だという。

公式の開票結果は夜に発表が始まる見通し。主に軍関係者による約60万票の不在者投票は、総投票数のおよそ10%に当たり、その集計は29日まで完了しない。

最終結果が確定後、イスラエル大統領はすべての党との協議を経て、連立政権を樹立する可能性が最も高いと判断した政党の党首に組閣を要請する。この手続きには数週間かかる可能性がある。

これで連立政権が成立しなければ、最終的には再び選挙が必要になることもある。

アイゼンコット氏率いるヤシャル党の本部では、公共放送KAN、チャンネル12、チャンネル13が発表した最初の出口調査で、野党陣営が国会で最大勢力となり、連立与党の50議席に対して52~53議席を獲得するとの予測が示されたのを受け、支持者らは歓声を上げ、「ビビ、家に帰れ!」と連呼した。「ビビ」はネタニヤフ氏の愛称。

アイゼンコット党首は、自分たちは「歴史を作った」と述べ、「国民の判断が確実に、シオニスト政府に反映されるようにする。つまり、安定して、イスラエルの全市民にとって良い政府になるようにする」と約束した。

ヤシャルと連携するベヤハド党を率いるヤイル・ラピド元首相は、ネタニヤフ氏の陣営は「壊滅的な敗北」を喫したと述べた。

一方、ネタニヤフ氏率いるリクード党のエルサレム本部に敗北を認める様子はなかったものの、緊張していると認める人たちもいた。

「終わるまでは終わらない。でも、冷や汗をかいている」と支持者の一人はBBCに話した。

ネタニヤフ氏の盟友ギデオン・サール外相は、左派陣営の祝賀ムードは「時期尚早だ」と述べた。一方、極右政治家のイタマル・ベン=グヴィル国家安全保障相は、自分が率いる極右政党「ユダヤの力」の支持者に対し、最終結果が「完全な右派政権」につながることを祈るよう呼びかけた。

ネタニヤフ首相はこの後、リクード党本部に姿を現し、自分たちの右派陣営が「大きな多数」を獲得したと宣言した。また、「強力な右派の国民政府」の樹立を呼びかけた。

ネタニヤフ氏は、「アラブ系政党の支援」によって支えられる政権にイスラエルを率いさせることはできないとも批判した。

ネタニヤフ氏はさらに、ドナルド・トランプ米大統領とともに「イランの脅威を完全に取り除くまたとない機会」をイスラエルは得ているのだと強調した。

イスラエルとアメリカは2025年6月、イランの核施設を標的とした共同攻撃を実施した。さらに今年2月末にも共同でイランを攻撃。以来、イランとの紛争が今も続いている。

多くの評論家は、イスラエルで政権を握るのがネタニヤフ氏の陣営だろうと、アイゼンコット氏の陣営だろうと、イランとの戦争にイスラエルが関わっていくという現在の方針が変更される可能性は低いとみている。

アラブ系2政党に注目

今回の選挙で「統一アラブリスト(ラアム)」と「ジョイント・リスト」のアラブ系2政党は、議会で数議席を上積みする見通しとなった。イスラエル人口の約2割を占め、自分たちをイスラエルのパレスチナ人市民と表現することも多いアラブ系イスラエル人の高い投票率が、躍進につながった。

両党は今回の選挙でキャスティングボートを握る存在になりつつあるが、連立政権で両党と協力すると、公然と表明する政党は一つしかない。

「私たちと『変革ブロック』と『統一アラブリスト』が参加することで、(議会過半数の)61議席がまとまるよう期待する」と、統一アラブリストのマンスール・アッバス党首は述べた。

2021年の総選挙後、統一アラブリストはナフタリ・ベネット氏とヤイル・ラピド氏が率いる連立政権に参加したが、その政権は1年後に退陣した。

「ジョイント・リスト」のユーセフ・ジャバリーン代表は、自分たちとの連携は「どの政治的シナリオでも、無視できないものだと警告した。

争点と有権者は

今回の選挙は、2023年10月7日のハマス主導によるイスラエルへの攻撃と、その後のガザ、レバノン、イランでの戦争を経て初めて実施されたものだった。

加えて今回の選挙は、単に指導者や政党を選ぶだけでなく、イスラエルが現在の強硬な宗教ナショナリズム路線を継続するのかどうかに影響する可能性があるため、イスラエル国民にとって同国史上でも特に重要な選挙の一つとみなされていた。

選挙の主な争点には、10月7日の攻撃につながった安全保障上の失策に対する説明責任、地域紛争の遂行方法、増大する兵役負担の分担方法、司法改革、国際社会におけるイスラエルの立場の問題などが含まれていた。

テルアヴィヴ北部の野党支持地域にある投票所の外では、若者から高齢者までの選挙運動員たちが大勢集まり、最後の1票を獲得しようと投票終了直前まで活動を続けていた。

ジヴィット・アブラムソン氏(88)はBBCに対し、ネタニヤフ氏が「この国をだめにしている」ためアイゼンコット氏に投票したと話した。

「彼(ネタニヤフ氏)は自分のことしか考えていない。本当に自分のことだけだ」とも、アブラムソン氏は述べた。

一方、クレア・トゥーゲンダフト氏は、「国外へ向けてこの国を導くうえで、彼がこの国で最も適した人物だと思うから」と言い、ネタニヤフ氏に投票したと話した。

首相と与党陣営は、左派およびアラブ系有権者の投票率急増を警告しながら、支持者に投票所へ向かうよう呼びかけた。

ネタニヤフ氏は動画の中で、「投票しなければ、明日の朝には左派政権とアラブ系政党、過激なイスラム勢力による政権が誕生し、この国を失うことになる」と訴えた。

リクード党と複数の右派政党は、投票時間を現地時間午後10時以降まで延長するよう求めた。多くの対立陣営はこれについて、与党の切迫感のあらわれだ受け止めた。

しかし中央選挙管理委員会は最終的にこの要請を退け、「現在の状況は投票時間の延長を正当化するものではない」と述べるとともに、高い投票率は「民主的プロセスへの国民の強い関与を反映している」と説明した。

アイゼンコット氏とは

中道政党「ヤシャル」を率いるアイゼンコット氏は、イスラエル国防軍の元参謀総長。10月7日の事態につながった安全保障上の失敗について、説明責任を求めることを選挙運動の柱としてきた。

同氏の人気には、軍での実績に加え、昨年9月に初めてヤシャル党を結成したばかりの、比較的新しい政治家だということも影響している。

アイゼンコット氏はガザ戦争の初期に、兵士だった息子を失った。ネタニヤフ首相の下で戦時内閣に参加したものの、紛争への首相の対応をめぐり2024年に辞任した。

ガザ問題について、アイゼンコット氏の立場はネタニヤフ首相と大きく異なるわけではない。同氏は最近、アメリカ主導の和平計画によって、あるいは必要なら軍事的手段によって、18カ月以内にガザ地区におけるハマス支配を終わらせると公約した。

アイゼンコット氏はイスラエル人によるパレスチナ入植はおおむね支持しているものの、ヨルダン川西岸地区を事実上二分することになるとして物議を醸している「E1」入植地計画の推進には反対している。

イスラエルで政権を作るには

イスラエルで政党が単独で議会の過半数を獲得したことはこれまで一度もなく、そのため常に連立政権が組まれてきた。

連立の手続きは開票後に始まる。イスラエル大統領は各党首と協議したうえで、政権樹立の可能性が最も高いと判断した指導者に組閣を要請する。

指名された候補者には連立政権を発足させるため、28日間が与えられるが、さらに時間が必要な場合は14日間の延長を求めることができる。

この期間内に交渉がまとまらなければ、大統領は別の候補者を指名し、その人物に独自の連立政権樹立を試みるよう求めることができる。

それでも失敗した場合、クネセト(国会)議員が大統領に対し、3人目の指導者に組閣努力の機会を与えるよう要求できる。そしてそれも不成功に終われば、総選挙が再び実施される。

2019年から2022年にかけて、各党が繰り返し協力関係を築けず、イスラエルでは5回の総選挙が実施された。

2022年の総選挙では、ネタニヤフ首相率いるリクードが120議席中32議席を獲得して第1党となった。その後、同氏は複数の極右政党と連立を組み、自身と連立相手を合わせて過半数となる64議席を確保した。