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スペインの高速列車衝突、運転士と管制の交信音声が浮上 直前のやり取りが明らかに
スペイン中部で28日朝に起きた高速列車の衝突事故で、列車の運転士と管制センターが発生の数分前に交わしたやり取りの音声が流出した。複数のスペインメディアが内容を報じた。
事故は28日午前9時過ぎ、トレド県ウルダ近郊で発生した。マドリードからセビリアに向かっていた列車が、線路上で停車していた別の列車に追突し、これまでに69人の死亡が確認された。当局は現在、事故原因を調べている。
スペインメディアが報じた流出音声には、マドリードの管制センターと列車の運転士2人との間で交わされたやり取りが記録されている。それによると、25キロメートル先の線路上に別の列車が停車していたにもかかわらず、高速列車に走行許可が出されたことがうかがえる。
ペドロ・サンチェス首相は、当局が「この悲劇の細部に至るまで、徹底的に解明する」と表明した。
この事故では数十人が負傷した。生存者たちは、事故現場には泣いている人や血を流している人、座席に閉じ込められた人や手足を失った人がいたと証言した。車内には煙が立ち込め、車両1両が炎上した。
スペイン国王フェリペ6世とレティシア王妃は29日、負傷した乗客たちが入院するトレド県の病院を訪れた。
国王はその後、犠牲者の遺族に哀悼の意を表し、調査を通じて事故原因を究明し、再発防止のために必要な措置を明らかにすると約束した。
2013年以来最悪の列車事故
28日の事故は、ヨーロッパの近代史で最悪の列車事故の一つ。スペインでは2013年、北西部サンティアゴ・デ・コンポステーラ郊外で80人が死亡する列車事故が起きており、今回の事故は、これ以降で最悪のもの。スペインは29日から、3日間の全国的な服喪期間に入った。
停車していた列車に追突したのは国営鉄道レンフェの列車で、客397人が乗っていた。追突された民間鉄道イリョの列車には、客147人が乗っていた。
事故が起きた区間では、コンピューターの不具合で自動信号システムに問題が発生していたと報告されている。このため、走行していたすべての列車に一時停止が命じられていた。
しかし、レンフェの列車に対して「誤って」走行の指示が出されたと、スペインのオスカル・プエンテ運輸相は明らかにした。
管制が「通常の速度」での走行を指示
スペイン紙エル・パイスや公共放送RTVEなど、複数のスペインメディアは、運転士と管制センターの音声記録について報じた。
記録の一つでは、技術的な問題が発生していたレンフェの列車の運転士と、管制センターのオペレーターの会話が確認できる。
数回のやり取りの後、管制センターの担当者は運転士に対し、「走行を続け、その後(側方信号閉そくに従い)通常の速度で通常運行」するように指示した。
これに対し、運転士が「通常の速度で?」と尋ねると、管制担当は「はい」と答えた。
側方信号閉そくとは、自動信号やデータ伝送システムが故障した場合に用いられる、バックアップまたは代替の列車運行方式。
別の音声記録では、停止していたイリョの列車の運転士が、列車制御システムとの通信が途絶え、列車が動かないと話している。
この運転士は、「列車がウルダの侵入信号の手前で停止している」と管制担当に伝えた。一連のやり取りの後、管制担当は運転士に通常通り「運行を再開する」よう指示した。
しかし、その後の記録によると、イリョの運転士は管制センターに再び連絡を入れ、列車を動かせない状況だと伝えた。「(安全)システムの操作ができず、侵入信号の手前で停止したままだ」と運転士は述べた。
この音声記録からは、レンフェの列車が接近する中、イリョの列車が線路上に停止したままであることが、管制担当に伝えられていたことがうかがえる。
民間鉄道イリョは、同社の列車が国営鉄道レンフェの列車に「追突された」としている。
スペインのプエンテ運輸相は28日、コンピューターの不具合と人為的ミスが原因との見方を示した。システム不具合の対応に当たる、マドリードにある24時間体制の管制センターが、速度を制限せずに列車の運行を再開させるという「不可解な」判断をしたと説明した。
音声記録が流出、政治家から批判の声
音声記録の流出をめぐっては、スペインの一部の政治家から批判の声が出ている。左派・スマール連合のアルベルト・イバニェス議員は、「卑劣な」行為だとソーシャルメディアに投稿した。
急進左派政党ポデモスの首相候補イレーネ・モンテロ氏は、事故の責任を一人の職員に負わせるべきではないと述べた。また、列車の運転士や専門家は長年、列車部門の自由化に警鐘を鳴らしてきたと付け加えた。
事故現場を訪れたサンチェス首相は、「犠牲者の家族を支援するだけでなく、この悲劇の細部に至るまで、徹底的に解明し、同じことが決して繰り返されないよう安全対策を強化するため、昼夜を問わず取り組んでいる」と述べた。
スペインのほとんどの政党は、28日に予定していた選挙関連のイベントを中止した。例外は極右政党ボックス(VOX)で、サンティアゴ・アバスカル党首は、「悲しみを利用して(鉄道インフラに対する)批判を封じ込めようとする」動きには加わらないと述べた。
約1500人が運輸省前で首相らの辞任要求
公共放送TVEによると、首都マドリードにある運輸省庁舎前に約1500人が集まり、夜通し抗議した。抗議者の多くは、サンチェス首相とプエンテ運輸相の辞任を要求した。
複数の抗議者が瓶や発炎筒を投げ、警官は催涙ガスを使って群衆を解散させた。負傷者や逮捕者は報告されていない。
運転士らは29日、予定通りストライキを実施した。スペインの鉄道運転士組合(SEMAF)は、「鉄道の安全を守るため」にストライキを行ったと説明した。
最大野党・国民党のアルベルト・ヌニェス・フェイホー党首は、「スペイン国民には、自国のインフラに何が起きているのかを知る権利がある」と述べた。
事故現場では、救助隊が夜を徹して事故車両を切断し、犠牲者の捜索を続けた。死者の多くは依然として身元が特定されていない。
スペイン内務省によると、復旧作業を支援するため、数百人が現場に派遣された。犠牲者の捜索やがれきの撤去には、ドローンやヘリコプターが投入されている。
スペイン治安警備隊の報道官はBBCに対し、複数の専門部署から900人以上を動員したと明らかにした。現在の最優先事項は、死者の身元を特定することだという。
身元確認にどの程度の時間がかかるかは分からないとしている。行方不明者の家族に対しては、DNAサンプルを提供するために設置された地元の窓口を訪れるよう呼びかけた。