欧州スーパーへのサイバー攻撃、イギリス食肉業界にも影響

スーパーの店舗内で、店員が空になった冷蔵庫の前でひざまずきとけた食品を取り出している。彼の傍らにはペーパータオルのロールが床に置かれている。
画像説明, スウェーデンは、一部のスーパーマーケットの冷蔵庫の温度が上昇したというサイバー攻撃を報告した国のひとつだった
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リヴ・マクマーン・テクノロジー記者、クリス・ヴァランス上級テクノロジー記者

2日にヨーロッパ各地のスーパーマーケットの冷蔵庫や冷凍庫を狙ったサイバー攻撃により、イギリスの食品サプライチェーン企業にも影響が出ている。イギリスの国家サイバーセキュリティーセンター(NCSC)は3日、「イギリスで脆弱(ぜいじゃく)な技術が悪用された事例がいくつかあると、把握している」と発表した。

NCSC最高責任者のリチャード・ホーン博士は、BBCラジオ4の番組「トゥデイ」で、イギリスで影響を受ける可能性のある組織に警告するため、「夜通し作業した」と述べた。

英独立食肉供給業者協会(AIMS)はBBCに対し、300人を超える加盟者の一部が、ハッキングの余波として予期しない「巻き添え」になったと述べた。

AIMSによると、二つの加盟事業所が業務用冷蔵庫の霜が溶け始めるのを目撃した。別の加盟事業所では、冷蔵庫の温度が摂氏100度まで上昇したという。

AIMSのトニー・グッジャー広報担当は、影響を受けた機器は当時空だったため、農産物の被害はなかったと述べたが、企業に対し警戒を怠らないよう呼びかけた。

「今回の事件は、サプライチェーンのどの段階にいるかにかかわらず、食品業界に携わるすべての人々に対し、自分たちの事業が一部の人々から標的とみなされる可能性があると、改めて認識させるものとなるべきだ」と、グッドジャー氏は述べた。

アイルランド、スウェーデン、エストニア、ベルギーなどのスーパーマーケットでは2日、冷蔵庫や冷凍庫の温度が上昇しているとの報告が相次いだ。いずれも、10月にフランスのスーパー数百店舗が被害を受けた攻撃と同じ手法だと考えられている。

数百もの店舗が夜間のハッキングの標的となり、数百万ユーロ相当の生鮮食品や冷凍食品が被害を受けた。

ヨーロッパのほとんどのスーパーマーケットはインターネットに接続されており、管理や問題対応は遠隔操作が可能になっている。一連の攻撃は、冷蔵・冷凍システムの遠隔制御に使われているシステムの脆弱性を悪用したもの。この脆弱性は、数カ月前にサイバーセキュリティーの研究者によって明らかにされていた。

ホーン博士は3日、BBCに対し、ハッキングの背後に誰がいるのかを断定するには「まだ時期尚早だ」と述べた。

一方で今回の事件は、組織や企業が、大勢が日々使用し必要とするあらゆるアプリケーションを支える技術を、確実に安全かつ最新の状態に保っておく必要性を緊急に示すものだと述べた。

「私たちの社会が依存する技術基盤への投資は、必要な水準に達してこなかった」とホーン博士は述べ、システムの耐用年数を過ぎても多くの企業が運用し続け、更新もせず、インターネットから切り離された安全な場所に保管している現状を指摘した。

多くのサイバーセキュリティー専門家が、こうした慣行はハッカーにとって格好の標的となり、簡単に悪用され得る脆弱性を生み出す可能性があると指摘している。

しかしホーン博士は、こうした脆弱性は今後、「敵対勢力が持つAI(人工知能)」によってさらに素早く簡単に発見され、攻撃されるだろうと指摘した。

「すべての組織が、自分たちが何に依存しているのかを見直し、刷新に投資する必要がある」

「私たちはできる限り介入する。だが最終的には、それはあなたのビジネスであり、あなたの慈善事業であり、あなたの人生だ。選択をし、賢明な選択をしなければならない」

廃棄される食品

赤いポロシャツを着たスーパーの店員が、店舗の搬出入口と思われる場所から運び出された冷凍食品を、業務用のおおきなごみ箱に投げ入れている
画像説明, 欧州各地で多くの冷凍食品が廃棄された

2日に欧州各地で発生したサイバー攻撃では、ベルギーとルクセンブルクではデルハイゼ・スーパーマーケットの約40店舗が影響を受けた。スウェーデン、アイルランド、オランダ、エストニア、フィンランドでも、一部の店舗が被害を受けた。

影響を受けた冷蔵庫の一部を製造しているベルギー企業サブコベルは、冷蔵庫の蒸発器が霜取りモードに切り替わり、庫内温度が上昇したと述べた。。これは、10月にフランスのスーパー数百店舗が被害を受けた攻撃と同じ手法だと考えられている。

そしてフランスでの事件と同様、2日に被害を受けた小売業者の多くは、腐った食品を廃棄する以外に選択肢がなかったと述べ、中には数十万ユーロ相当の青果物を廃棄したという店舗もあった。

ベルギーでデルハイズ・スーパーマーケットを経営するマチュー・ティルマン氏は、BBCに対し「本当に残念だ」と話した。

「飢えている人、食べるものが足りない人がたくさんいるのに、どうしてこんなにたくさんの食料を捨てるはめになったのか」

「こういう時は、この仕事を辞めたくなる」

今のところ、イギリスではこうした影響はほとんど、あるいは全く見られない。

しかしBBCは、イギリスの大手スーパーマーケット各社にコメントを求め、同様のハッキング計画を防ぐためにどのような対策を講じているのかを尋ねた。

英小売協会(BRC)の規制問題担当副ディレクターを務めるグレアム・ウィン氏は、「小売業者はサイバーセキュリティーに多額の投資を行っている。現在はNCSCと協力して、冷蔵庫や冷凍庫が潜在的な攻撃に対して可能な限り安全であるよう取り組んでいる」と述べた。

BRCには、アズダ、リドル、マークス・アンド・スペンサー、セインズベリー、テスコといったスーパーが加盟している。

NCSCの業務責任者であるポール・チチェスター氏は、3日に発表された年次報告書の中で、NCSCは影響を受けたイギリスの組織と引き続き協力し、監視していくと述べた。

「現時点では、影響は最小限だ」と彼は付け加えた。

「我々は、イギリスに存在する脆弱性を特定し、誰かが悪用する前にそれらを解消するために、様々な組織と協力している」