トランプ氏、首席補佐官に強硬派ミラー氏任命 中間選挙の歴史的敗北受け人事刷新

ホワイトハウスの大統領執務室で、ダークスーツ姿のミラー氏が口を閉じ、黒いファイルを両手で持ち、手前に座るトランプ氏を見ている
画像説明, トランプ氏は首席補佐官にミラー氏(左)を任命した(画像は今年8月撮影)
Published
この記事は約 6 分で読めます

アメリカのドナルド・トランプ大統領は6日、スティーヴン・ミラー大統領次席補佐官(41)を新しく大統領首席補佐官に任命した。ミラー氏は、トランプ政権で強硬な移民政策を打ち出してきたことで知られる。トランプ氏率いる共和党は、3日投開票の中間選挙で歴史的敗北を喫した。これを受けて、前任スージー・ワイルズ首席補佐官(69)が辞表を提出した。

トランプ氏は退任するワイルズ氏について、「非常にいい仕事をしてくれた」としつつ、「変更が必要なこともある」と記者団に話した。

トランプ氏に忠実なミラー氏は、第1次トランプ政権では上級顧問を務めていた。9日に首席補佐官に就任する予定。

ミラー氏を首席補佐官へ昇格させる理由について、トランプ大統領は6日、「スティーヴンは一番最初から私と一緒にいる。理解があり、政治的に非常に優れている。(中略)管理職としても、とても優れている。素晴らしい仕事をするはずだ」と記者団に述べた。

2020年大統領選の敗北後もトランプ氏を支える

ミラー氏はトランプ氏の最側近の一人で、トランプ氏が2020年大統領選で敗れた後も支え続けた。大統領に復帰したトランプ氏と共に昨年、ホワイトハウスへ戻った。

ミラー氏は、トランプ氏を「アメリカ史上、最も大きな変革をもたらした政治指導者」と称賛する内容をソーシャルメディアに投稿。「アメリカを破壊しようとする者たちから、たった一人で国を救った」とした。

ミラー氏は、ワイルズ氏が長年にわたってトランプ氏と国に尽くしてきたことや、友情に感謝を示した。

そのうえで、「今、我々の使命は今まで以上にはっきりしている。大統領を支え、この偉大な共和国を守るため、全身全霊で闘う必要がある」と書いた。

BBCがアメリカで提携するCBSニュースによると、ワイルズ氏は5日夜、トランプ氏に辞表を提出した。3人の情報筋はCBSニュースに対し、ワイルズ氏が中間選挙での敗北を理由に辞任したと説明した。

トランプ氏は6日に声明で、ワイルズ氏は「トランプの政治作戦」に異動すると発表した。ワイルズ氏の部下がホワイトハウスに残るかは不明。

ワイルズ氏はソーシャルメディアに、トランプ陣営の一員だったことは「生涯の名誉」だったと書いた。

「私たちが一緒に実現したことに参加できて、とても誇りに思う」とワイルズ氏は書き、「私の役割は変わるかもしれないが、大統領に対する、そしてこの使命に対する私の献身は決して変わらない」と付け加えた。

ワイルズ氏は、トランプ氏と特に近い関係にあり、政権内で最も影響力のある人物の一人とみなされてきた。

トランプ氏は先月、ワイルズ氏を近く交代させるのかと記者団に質問されると「可能性はゼロだ」と回答。「スージーはここにいるし、これからもずっと長くここにいる」と述べていた。

ワイルズ氏は今年に入りがんを患っていたが、診断から6カ月後の9月には、寛解状態にあると発表した。

中間選挙後に退任する最高位の政権幹部

ワイルズ氏の事情に詳しい情報筋はCBSニュースに対し、同氏は当初、2026年末か来年初めまで首席補佐官を続ける意向だったと語った。

しかし、トランプ氏が退任時期を前倒ししたという。

中間選挙後にトランプ政権を離れるのは、ワイルズ氏だけではない。トランプ氏の主要政策の一部を実行してきた司法省の幹部数名も、中間選挙での共和党の大敗後に相次ぎ辞任した。

5日には、司法省公民権局のハーミート・ディロン局長が辞任した。同局は、非アメリカ市民による投票の取り締まりや、多様性・公平性・包摂性(DEI)に関するイニシアチブの撤廃に注力してきた。ディロン氏は、銃器所有者の権利保護を重視し、トランスジェンダーの人々の公民権保護に反対していた。

同省国家安全保障局のジョン・アイゼンバーグ司法次官補も辞任した。アイゼンバーグ氏は第1次トランプ政権では、メディアへの情報漏えいに関する調査を行った。また、性犯罪で有罪とされた富豪ジェフリー・エプスティーン元被告(故人)に関する、数百万ページにおよぶ連邦政府文書を黒塗り処理する部署を指揮した。

6日には、フロリダ州のジェイソン・レディング・キニョネス連邦検事が辞任した。キニョネス氏は、政敵とみなす人物を司法省に訴追させるトランプ氏の取り組みで、中心的な役割を担っていた。同検事は、トランプ氏が2021年に大統領を退任した後の機密文書の取り扱いをめぐる刑事捜査や、2016年大統領選におけるトランプ陣営とロシアとの接触をめぐる刑事捜査について調べるなどした。

ダークスーツ姿のミラー氏と、赤いジャケットを着たワイルズ氏が並んで立っている
画像説明, ミラー氏(左)とワイルズ氏

民主党は批判

ミラー氏の首席補佐官への起用をめぐっては、民主党から批判の声が上がった。中間選挙で有権者が、共和党の政策への怒りを示したにもかかわらず、トランプ氏が強硬姿勢を貫いていると、民主党は非難している。

民主党が多数派となる下院で、監視・政府改革委員会を率いる予定のロバート・ガルシア下院議員は、ミラー氏と、同氏による「不正行為」について調査を継続する意向を示した。

「スティーヴン・ミラー氏は、我々のコミュニティーを恐怖に陥れ、米市民や移民の家族を連れ去り、死に追いやった、ICE(移民税関捜査局)の強制捜査の立案者だ」と、ガルシア氏は述べた。

民主党の下院トップ、ハキーム・ジェフリーズ院内総務は、ミラー氏について、「危険な排外主義者で無謀な過激派だ。その手はアメリカ人の血で汚れている」と非難。「政権における(ミラー氏の)存在は、悪性腫瘍のように取り除かれるべきだ」とした。

一方でトランプ政権のスティーヴン・チャン広報部長は、ミラー氏を称賛した。

「トランプ氏の政策を、スティーヴン氏以上に強く支持している人物はいない。歴史的な第2次政権の残る任期において、現政権が大きな成果を上げるために貢献してくれるはずだ」と、チャン氏は述べた。

連邦議会上下両院の両党の議席数を示すグラフ

スティーヴン・ミラー氏とは

ミラー氏は、カリフォルニア州サンタモニカのアシュケナージ系ユダヤ人の家庭に生まれた。高校時代から政治に関心を持ち、物議を醸すような意見を公言するようになった。

ノースカロライナ州のデューク大学を卒業し、2009年にはアラバマ州選出の超保守派ジェフ・セッションズ上院議員の補佐官となった。セッションズ氏は、上院議員として初めてトランプ氏への支持を表明した人物。

ミラー氏はこの頃、強硬な移民政策を打ち出し、超党派の移民改革法案の阻止に尽力した。2016年1月にはトランプ氏の大統領選陣営に加わり、それ以来一貫して忠誠を尽くしている。

ミラー氏は、トランプ氏が自分の政策を推進するために大統領令を利用する手法を主導し、同政権による行政権限の行使を一貫して擁護してきた。

「ゼロ・トレランス(非容認)」政策に基づく、移民親子の分離を推進したほか、第三国への強制移送を提唱し、移民当局に1日最大300人を拘束するよう促すなどした。

イスラエルの強力な支持者でもあるミラー氏は、アメリカとイスラエルによる対イラン軍事行動についても強硬な立場を取ってきた。