【米中間選挙2026】 トランプ氏の権力、国内では弱まっても国外では違う=BBC国際編集長

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ジェレミー・ボウエン国際編集長

ドナルド・トランプ米大統領は、最大級のやりとりを好む。その点で、アメリカの有権者の大多数によってトランプ氏に与えられた今回の中間選挙での大敗には、政治的な因縁があると言える。

しかし、彼が政治家キャリアの晩年に向けて穏やかになることは、期待しない方がいい。連邦議会の上下両院で与党・共和党が過半数を失ったことで、彼の指示、操作、邪魔する力は、たしかに国内では制限される。

だが国外では、話は違ってくる可能性が高い。

米大統領および米軍最高司令官として、彼はアメリカの軍事力を行使する大きな権限を保持している。

トランプ氏の行動や方針の揺れを予測するのは容易ではない。大統領として彼は、政策のUターンを武器としてきた。その一方、変わらないものもある。

その一つが、敗者とみなした人への軽蔑であり、自分は絶対に敗者とはみなされないという決意だ。

そんな彼が、中間選挙での惨敗を帳消しにしようと、国外で行動を起こす可能性はある。選挙で負けたのは自分の名前が投票用紙に載っていなかったからだと、あらゆる証拠にもかかわらず、彼は主張している。今回の選挙結果にひるむことなく、強い大統領による決定的かつ勝者にふさわしい行動だと誇示するような、動きを取ろうとするかもしれない。

イランとの戦争

中間選挙を前にした数週間、米軍の派遣状況と、トランプ氏のしばしば好戦的な発言から、アメリカがイランとの戦争に戻る準備をしているとの観測が強まった。

投票日前夜には、アメリカはペルシャ湾にあるイランの島に限定的な爆撃を実施した。

民主党のクリス・マーフィー上院議員は、脳卒中で入院する前、イランとの戦争再開の軍事的選択肢に関する機密ブリーフィングに出席した。

彼はそのときの計画を、詳細は明かさずに、「正気とは思えない」ものだったと非難した。そして、「壊滅的な事態悪化」を引き起こすものだと警告した 。

アメリカが民間インフラへの爆撃を計画しているとの臆測は、以前からある。

それは、戦争犯罪に当たる可能性が高いだけでなく、湾岸地域の米同盟国の同じような対象への、イランによる壊滅的な報復攻撃を招くことにもなりうる。対象にされる可能性が高い国の筆頭は、アメリカにもイスラエルにも近いアラブ首長国連邦(UAE)だろう。

イランの政権は、アメリカの政治情勢を注視している。ホルムズ海峡封鎖の影響がアメリカ国内で政治問題化していることには、満足感も示している。

戦争とホルムズ海峡での船舶への攻撃によって、ガソリンやディーゼル燃料、農業用肥料など、あらゆる物の価格が上がり続けている。それがトランプ氏と共和党にダメージを与えていることを、イランは認識している。

イラン国会のモハマド・バゲル・ガリバフ議長は、次のような警告をソーシャルメディアに投稿した。

「良心からか、生活費(の上昇)からかはともかく、アメリカ人は戦争にノーを突きつけた。私たちはこのメッセージを支持する。もし米政府が国民の意思を裏切り、国際的な資金提供者や脅迫者のために行動するなら、私たちからのノーが悪夢とともにやって来ることを思い知るだろう」

イスラエルで先週の選挙のあと、暫定首相となり、新政権樹立に向けて動いているベンヤミン・ネタニヤフ氏は、イランのイスラム政権を打倒したいとの思いを繰り返し表明している。

イスラエルとアメリカの報道によれば、ネタニヤフ氏はトランプ氏に、戦争再開を働きかけているという。

ネタニヤフ氏は、現在の連立パートナーらと合わせても、新政権を樹立できるだけの議席を確保できていない。

その状況で、もし大規模な戦争が再開され、それが長期化し、イスラエル国民が直接攻撃されるような事態になれば、彼は統一政府の樹立という新たな選択肢を得ることになる。その政府では、彼は卓越した政治手腕を駆使し、支配を続けることになるだろう。

ウクライナでの戦争

トランプ氏が目を向ける可能性のあるもう一つの主な紛争は、ウクライナとロシアによるものだ。すでに第1次世界大戦よりも長く続いている。

トランプ氏は中間選挙を前にして、ロシア産ディーゼル燃料を購入するため、ロシアへの制裁を部分解除した。米消費者の経済的な負担をどうにか和らげようと、制裁緩和を延長・拡大する可能性もある。

ウクライナは、同国を支援する欧州諸国からの資金を使った迎撃システムの増産を、アメリカに要請している。だが、ほしいような回答は得られていない。そのため、以前より多くのロシアの弾道ミサイルがウクライナに飛来している。ウクライナの民間人らは、死ぬかもしれないという緊張状態に置かれているが、トランプ氏はそれについて、目立った懸念を示していない。

クレムリン(ロシア大統領府)の報道官は、ロシアとしては今回の選挙結果が、トランプ氏の「和平努力」に影響を与えないことを望むと述べている。

トランプ氏は、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領に対し、領土に関してロシアへの譲歩を強要しようとしている。そうすることで、ウクライナにとって事実上の降伏となるような合意を成立させようとしている。

トランプ氏はやがてこれを、自分が解決・終結させた戦争だとする、現実とは思えないリストに加えるだろう。

選挙で敗れ苦痛を味わったトランプ氏が、ゼレンスキー氏に対し、同氏がこれまで繰り返し拒否してきた譲歩案を受け入れるよう、圧力を強めることも考えられる。

トランプ氏が首都ワシントンに自身の記念碑を建てようとし続けることは、まず間違いない。

さらに、彼の国内外における今後の動向に関する予測は、必ずしも正しいとは限らないことを、改めて強調しておく必要がある。それでも間違いなく言えるのは、彼が大統領のロッキングチェアに座り、ホワイトハウスでの任期が終わるのをただ待つことは決してないということだ。

トランプ氏は大統領の在任中ずっと、権力の味を楽しみ、行使してきた。それは今後も変わらないだろう。そして、アメリカを揺るがすことはできなくても、世界を揺るがすことはできると示したいと、彼が考えている可能性は十分にある。