【米中間選挙2026】 イスラム教徒初の上院議員に選出、民主党左派エル=サイエド氏 ミシガン州

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3日に投開票されたアメリカの中間選挙で、激戦となったミシガン州の連邦上院選は、民主党候補アブドゥル・エル=サイエド氏(42)が勝利を確実にした。アメリカで初のイスラム教徒の連邦上院議員となる。左派のエル=サイエド氏をめぐっては、予備選で党内の対立があらわになり、本選挙でも共和党側から激しい攻撃が行われるなどした。

エル=サイエド氏は、ドナルド・トランプ大統領の支持を受けた共和党候補マイク・ロジャース氏を破った。エル=サイエド氏は、自分を根拠なくテロと結びつけようとする激しい攻撃や、民主党のほかの政治家との対立にも折れなかった。

ロジャース氏は、エル=サイエド氏を共産主義者だと印象付けようとしたほか、イスラエルに対するエル=サイエド氏の立場や、彼がイスラム教徒だということを理由に、批判を展開した。

エル=サイエド氏の支持者らは3日、開票イベントの会場に集まり、全米各地で民主党が議席を伸ばす様子を見守りながら、ミシガン州上院選の結果が出るのを長時間待ち続けた。日付が4日に変わり、エル=サイエド氏が勝利宣言のために登壇すると、支持者らは盛大に祝福した。

国民皆保険や富裕税の導入を掲げる

医学博士で元公衆衛生当局者のエル=サイエド氏は、国民皆保険制度や富裕税の導入など、左派色の強い政策を掲げて選挙戦を展開した。

投票日の数日前には、民主党予備選でエル=サイエド氏と争った穏健派のヘイリー・スティーヴンス連邦下院議員が、共和党のロジャース候補への支持を表明した。そうした中で、エル=サイエド氏は勝利を収めた。

エル=サイエド氏が壇上に上がると、支持者らは同氏の名前を叫び、会場は耳をつんざくような歓声に包まれた。大勢がスマートフォンを掲げ、イスラム教徒が連邦上院議員に選ばれる歴史的瞬間を撮影した。

感極まって抱き合う支持者もいれば、コンサート会場にいるかのように、エル=サイエド氏のスローガンを繰り返し唱和する人もいた。エル=サイエド氏は「政治から金を排除し、あなたの懐に金を。全ての人にメディケア(国民皆保険制度)を」というスローガンを掲げている。

ガザでのイスラエルの行動を「ジェノサイド」と批判

エジプト系移民を親に持つエル=サイエド氏は選挙戦で、パレスチナ・ガザ地区におけるイスラエルの行動をジェノサイド(集団虐殺)と呼び、アメリカは対イスラエル支援を止めるべきだと訴えた。

ガザをめぐる問題は、全米で2番目にアラブ系アメリカ人の人口が多いミシガン州で、特に反響を呼んでいる。

これは、イスラエルを強力に支持するスティーヴンス氏と、エル=サイエド氏の緊張をさらに高める要因にもなった。スティーヴンス氏は民主党予備選で、親イスラエル・ロビー団体「米国イスラエル公共問題委員会(AIPAC)」から数百万ドル規模の支援を受けていた。

政治的に民主党が優勢な選挙区の予備選で民主社会主義の候補が相次いで勝利したことを受け、今回の選挙戦は、重要な激戦州における民主党左派の政治的影響力を測る試金石と広くみなされていた。

「名前と信仰を理由に攻撃された」

エル=サイエド氏は4日、「最も可能性が低い候補」に賭けてくれたと、集まった人々に感謝を述べた。一方で、対立候補らを激しく非難した。

「(相手陣営は)我々が長いこと目にしてきた中でも、特に醜い選挙活動に全力を注いだ」とエル=サイエド氏は述べ、「私の名前と信仰を理由」に攻撃してきたのだと強く批判した。

「彼らが望んでいたのは、一部の人々を受け入れる余地のない、あまりに小さなアメリカだった。しかし我々は、アメリカが我々全員を受け入れるのに十分な大きさを持つ国だと知っている」と、エル=サイエド氏は付け加えた。

勝利を「誇りに思う」と支持者

今回の勝利は、イスラム教徒のアメリカ人にとって画期的な出来事と言える。彼らは、トランプ大統領が直接発するメッセージなど、エル=サイエド氏に対する反イスラム的な言説が激しさを増していくのを、子どもたちと共に目の当たりにしてきた。全米でイスラム嫌悪が高まる中での勝利だった。

イスラム教徒のアラブ系アメリカ人ルーラ・アルーシュ氏はBBCに対し、選挙戦がうまくいったことに鳥肌が立ったと話した。

「アブドゥルと、彼が展開した選挙選、そして選挙期間中にアブドゥルに向けられたあらゆる憎悪やイスラム嫌悪の言説に負けなかった彼の家族を誇りに思う」

開票イベントに参加した別のイスラム教徒の女性も、エル=サイエド氏の勝利に感銘を受けたとし、自分にとって何よりも大切な出来事だとBBCに述べた。

「エル=サイエド氏は、私たちに大きな誇りを与えてくれる。私たちはちょっと得意げに、堂々と立つことができる。私たちの味方でいてくれて、私たちのために米議会で本気で闘ってくれる人がいると分かっているので」

勝利演説でアラビア語を使用

エル=サイエド氏は選挙期間中、トランプ氏のMAGA(アメリカを再び偉大に)運動の支持者からの攻撃には反撃するつもりだと、姿勢をはっきり示してきた。4日の勝利演説では、アラビア語の「アルハムドゥリッラー」と言う言葉を口にした。続いて、「右翼の連中に説明しておくと、これは単に『神に感謝を』という意味だ」と、共和党員を挑発した。

エル=サイエド氏はアメリカで、移民の両親のもとに生まれた。2001年9月11日の同時多発攻撃後のアメリカ社会で育った、アラブ系アメリカ人やイスラム教徒の世代を代表する存在だ。

エル=サイエド氏の勝利を祝うため、イリノイ州シカゴから家族と一緒に開票イベントに参加したというイスラム教徒の南アジア系女性は、自分がアメリカに属していることを実感できなかったり、政界に自分の居場所がないと感じてきたりしたすべての人にとって歴史的瞬間だと、BBCに話した。

「アブドゥルという名前の人が成功できるなら、次の世代も、自分たちもできると、前を向いて言うことができる」

「最も接戦となった選挙の一つ」

ミシガン州の連邦上院議席は、任期満了を迎えるギャリー・ピーターズ氏が再選を目指さないと表明したことで、エル=サイエド氏たちが争うこととなった。今回の中間選挙で最も接戦の選挙区の一つになると、アナリストたちはみていた。

共和党の牙城を含む複数の選挙区で民主党候補が相次ぎ当選する中、エル=サイエド氏の勝利は、連邦上院における民主党の支配をさらに強固なものにした。

エル=サイエド氏は、共和党のロジャース候補や、民主党予備選で対立したスティーヴンス氏を強力に支援する、外部団体からの巨額の資金拠出にも対抗しなければならなかった。それでも、エル=サイエド氏は自らの立場について謝罪も後退もしなかった。

ミシガン州は、米大統領選で勝敗を左右する重要な激戦州の一つだ。2020年には民主党候補のジョー・バイデン氏が選ばれたが、2024年には共和党候補のトランプ氏が勝利した。

民主党のスティーヴンス氏が、投票の数日前に共和党のロジャース氏への支持を表明したことが、選挙結果に影響を与えるかどうか注目されていた。

民主党指導部は、スティーヴンス氏の動きを「卑劣な裏切り」だと非難した。同氏の陣営スタッフは一斉に辞任したと報じられている。ミシガン州でBBCの取材に応じた有権者たちは、スティーヴンス氏の行動に困惑したと話した。スティーヴンス氏が怒りに任せて行動したのではないかとの声もあった。

エル=サイエド氏はこの劇的な展開を意に介さない様子で、「ヘイリー・スティーヴンス氏のことは考えない」、「このことはまったく重要ではない」と記者団に述べていた。

エル=サイエド氏は選挙期間中、アメリカ政界やアメリカとイスラエルの関係に対する、草の根レベルの不満を代弁してきた。政界をめぐる金権問題に取り組むと訴え、トランプ氏の政策によってミシガン州の有権者の生活費が押し上げられたと主張するなどした。

エル=サイエド氏の選挙活動には、民主党左派のバーニー・サンダース上院議員や、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員も加わった。