米カリフォルニア州知事、州内の死刑囚548人全員を減刑へ 仮釈放なしの終身刑に

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ナーディーン・サアド(ロサンゼルス)、マデリーン・ハルパート

米カリフォルニア州のギャヴィン・ニューサム知事は5日、州内の死刑囚548人全員について、仮釈放のない終身刑に減刑すると発表した。

ニューサム知事は「すべてのカリフォルニアの人たち」に宛てた手紙で、州憲法によって知事に与えられた恩赦権限を行使し、死刑囚の刑を仮釈放なしの終身刑に減刑すると説明。 「私たちは今、被害者を永遠に記憶し追悼する一方、この犯罪者たちが世間に知られることなく死んでいくようにすることができる」と書いた。

「公職に就いて30年近くがたち、私は政府が正当に実現できることの限界を理解するようになった」とニューサム知事は書き、「私がこうするのは、国家による殺害はカリフォルニア州の価値観と相いれず、法制度の基盤を揺るがし、私たち一人ひとりの尊厳を損なうと確信するからだ」と説明した。

カリフォルニア州では2006年を最後に死刑を執行していないため、今回の決定は象徴的な意味合いが強い。他方、専門家たちによると、この決定で毎年数百万ドルの裁判費用を節約できる可能性があるという。同州では、有権者が1978年に投票で死刑復活を支持し、それ以降に13人の死刑囚に刑が執行された。

全米の州で最も人口の多いカリフォルニア州ではかつて、死刑囚の人数がアメリカで最多だった。ニューサム知事は2019年に、州内での死刑執行の停止を命令していた。

知事の発表を受けて、ロサンゼルス郡のネイサン・ホックマン地方検事は5日、ニューサム知事には刑を減刑する権限はあるものの、死刑制度を廃止できるのは州議会か有権者だけだとする声明を発表した。

「カリフォルニア州民は、二つの別々の住民投票で死刑廃止の是非を問われたが、どちらの投票でも、最も凶悪な犯罪に対しては死刑を維持することを選択した」とホックマン検事は指摘した。

カリフォルニアの政治ニュースサイト「CalMatters」は、知事の今回の減刑の決定について、カリフォルニア州最高裁判所の7人の判事のうち、少なくとも4人が承認する必要があると報じている。

自分の責任と良心

ニューサム知事は州民への手紙で、自分の決断は難しいながらも「正義の行動」だと書いた。さらに、州民の多くは残虐な犯罪を犯した者は死刑に値すると考えているものの、「州が道徳的にこの者たちを殺害することはできない」との結論に至ったのだと説明した。

知事は、カリフォルニア州の死刑執行制度はあらゆる基準から見て「失敗」だと指摘。これまでも今後も公平に適用されず、結果として複数の無実の人が有罪判決を受ける結果になったと書いた。

死刑を仮釈放の可能性のない終身刑に減刑することについては、仮釈放のない終身刑は、自分が合法的に科すことができ、かつ州が倫理的に執行できる最も重い刑罰だと説明した。

知事は、自分のこの恩赦が一部のカリフォルニア州民を怒らせ、傷つけることになると認め、「私はそのことを常に重く受け止め続ける」と書いた。

「知事として、この決定とその影響に対する責任は、私が自分一人で担う。一人ひとりの死刑執行についても、私が自分一人で責任を負うのと同じだ」とニューサム氏は書き、「こうした理由から、私は自分の良心に従うしかない。そして、この州の憲法が認めているとおり、カリフォルニア州の福祉のためにこの行動をとる」と表明した。

アメリカでは各州に、犯罪を起訴し、死刑が存置されている場合はそれを命じる権限がある。その権限の大部分は州知事に集中している。

ニューサム氏は、来年1月に知事としての任期を終える。後任には、3日の中間選挙で当選確実となった民主党のハヴィエル・ベセラ氏が就任の予定。

ニューサム氏は、退任後に2028年の大統領選に出馬するのではないかと取りざたされている。

米コロンビア大学で法学・市民的自由を専門とするバーナード・E・ハーコート教授はBBCに対し、アメリカでは死刑制度が広く支持されているものの、大統領候補になり得る人が選挙前に死刑廃止を訴えることは、前例がないわけではないと話した。

ハーコート教授は、フランスのフランソワ・ミッテラン元大統領が1981年のフランス大統領選挙でまさにそのように死刑廃止を訴えることで、「倫理的に高い立場に身を置き、それによって国民から報われた」と指摘した。

「ニューサム知事の減刑に関する発言には、非常に似た倫理観が感じられる。そして、ここでも有権者はそれを尊重するかもしれない」と教授は述べた。

州によって異なる死刑制度

アメリカ全体では、死刑の執行が増えている。今年9月末、テネシー州で死刑囚が致死量の薬物を2回にわたり注射されながら生き延びるという事態が起きて注目を集めたが、5日にはインディアナ州、フロリダ州、アラバマ州でそれぞれ1件ずつ死刑執行が予定されている。

アメリカでは、連邦政府と州政府の両方が死刑執行を命じることができる。

アメリカの非営利団体「死刑情報センター」によると、死刑は27州で合法だが、23州と首都ワシントンでは廃止されている。

カリフォルニア州は主に薬物注射による死刑執行を行っており、かつては男性の死刑囚をサンフランシスコの北にあるサン・クエンティン州立刑務所に、女性の死刑囚をセントラルヴァレーにあるセントラル・カリフォルニア女子刑務所に収容していた。

しかし、カリフォルニア州矯正更生局によると、2016年の住民投票により、必要な警備レベルが確保された他の施設への移送が認められた。

1996年にカリフォルニア州で女性2人を殺害し、さらに4人を銃撃した罪で死刑判決を受けたキース・ドゥーリン死刑囚(53)も、今回のニューサム知事の減刑措置に含まれる。同死刑囚の処遇にどう影響するかは、まだ不透明だ。ドゥーリン死刑囚は無罪を主張している。

ドゥーリン死刑囚は数十年にわたり、サン・クエンティン刑務所の死刑囚監房で暮らしていたが、州知事が2025年に死刑囚以外の受刑者のために刑務所を改修すると発表した際、別の刑務所に移送された。

ドゥーリン死刑囚の母ドナ・ラーセン氏は、ニューサム知事による減刑のニュースを知り、複雑な気持ちになったとBBCに話した。

「少なくとも処刑室は再建されないだろうし、カリフォルニア州民による(死刑囚の)殺人も、もう二度と起こらないだろう」とラーセン氏は述べた。

アメリカ自由人権協会(ACLU)のアンソニー・D・ロメロ事務局長は、ニューサム知事の決定を称賛した。

「人種差別的で間違いが起きやすく、非人道的な刑罰が、これまであまりに長いことカリフォルニア州に負担をかけてきた。正義は、その刑罰の廃止を求めてきた。(知事による)減刑は、この正義の要求を反映することだ」

「ニューサム知事は今回の措置によって、カリフォルニア州に死刑制度は存在しないことを改めて表明した。そして、人種差別に基づく不正義に真正面から立ち向かうことで、真の勇気を示した」と、ロメロ事務局長はたたえた。

アメリカの連邦レベルでは、死刑制度を長年支持してきたドナルド・トランプ大統領が、死刑を「アメリカ国民に対して最も凶悪な犯罪や致命的な暴力行為を犯そうとする者を抑止し、処罰するための不可欠な手段」と表現している。

連邦法違反の罪での死刑執行は2020年まで約20年間、一時停止が続いていた。トランプ氏は第1次政権の同年、この一時停止措置を終わらせ、半年で13件の死刑執行を命じた。

続くジョー・バイデン大統領の下で死刑執行の一時停止措置は復活したが、トランプ氏は2025年1月、2期目の初日に死刑制度を復活させる大統領令に署名した。

しかし、トランプ氏が大統領令に署名して以降、連邦政府による死刑執行は行われていない。