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大手テクノロジー株が急落、米中間選挙での民主党勝利受け AI開発の減速を懸念
レイチェル・クラン(米ニューヨーク)、オズモンド・チア(シンガポール)
米株式市場は5日、大手テクノロジー株が総崩れとなった。3日投開票の米中間選挙で、野党・民主党が圧勝し、連邦議会の上下両院で支配権を奪還したことを受け、人工知能(AI)開発が減速するのではとの懸念が広がった。
中間選挙では、AI規制を訴えた民主党候補が相次いで勝利した。
市場では5日、ハイテク株中心のナスダック総合指数は5.5%以上下落し、時価総額で推定2兆5000億ドル(約390兆円)が消失した。そのほかの米主要株価指数も大幅に下落し、1日の下落幅としては2025年以来最悪となった。
この急落は、AIに投じられている巨額の資金が、将来的に十分な利益を生み出すのかという、より広範な懸念に拍車をかけている。
アジア市場では6日朝、AIを支える半導体や関連機器を製造する企業の株価が下落し、ハイテク株比率が高い株価指数が軒並み急落した。
日本の日経平均株価は取引開始直後に6%下落した。半導体メモリ大手キオクシアの株価は12.6%以上、競合の東京エレクトロンは9.5%下落した。
韓国では、半導体大手SKハイニックスが11.5%超、サムスンが10%近く下落した。
韓国総合株価指数(KOSPI)が8.5%以上急落したことから、パニック売りを抑制するために取引を一時停止する「サーキットブレーカー」が発動された。
台湾加権指数(TAIEX)も8.3%以上値を下げ、半導体大手TSMCの株価は8.5%近く下落した。
「マーケットウォッチ」の半導体担当アナリスト、ブリトニー・グエン氏は、今回の下落について、AIインフラへの投資規模をめぐる「懸念が続いている」ことを示していると指摘した。
データセンター建設への圧力
全米各地で展開された今回の選挙戦で、民主党候補たちはデータセンター建設やAI開発の急拡大を抑制する政策を訴えた。また、AI技術の運用に不可欠な拠点の開発を制限することを目的とした数十件の措置を提案した。
民主党は結局、連邦議会の上下両院で主導権を奪った。これにより、ドナルド・トランプ大統領の残りの任期を通じて、民主党が議会を掌握することになった。
テキサス州知事に当選した民主党のジーナ・イノホサ氏は、選挙戦でデータセンター建設に強く反対し、新規建設を一時停止することを公約に掲げていた。
トランプ大統領は、株価下落の責任は政敵にあるとソーシャルメディアに投稿した。
「(中間)選挙結果を受け、株式市場は史上最悪の日の一つに直面した」
さらに、「いいか、責任があるのは共和党ではなく民主党だ。しかし、恐れる必要はない。我々は近いうちに、いずれにせよ、かつてないほど大きく強くなる。アメリカを再び偉大に!」と書いた。
民主党の一部からは、安全対策や監督体制を欠いたまま、AIが過度に拡大しているとの声が上がっている。また、中間選挙で獲得した連邦議会での新たな権限をいかして、現状を変えるとの約束も出ている。
民主党のバーニー・サンダース上院議員は5日、「米国民は、大手テクノロジー企業の寡頭(かとう)支配者たちが環境を破壊し、雇用を奪い、人類の未来を脅かすことを望んでいない。全米でデータセンター建設を直ちに停止すべきだ」とソーシャルメディアに投稿した。
ウォール街を「新たなパニック」が襲う
主要な半導体メーカーなど、AIデータセンターへの依存度が高い企業の株価は5日、大幅に下落し、投資家の間で以前から高まっていた懸念が浮き彫りになった。
半導体大手エヌビディアの株価は9%以上値を下げ、時価総額は4000億ドル(約63兆円)以上減少した。
ほかの半導体メーカーも大きく値下がりし、AMDとマイクロンの株価はそれぞれ17%以上下落した。インテルは10.3%安、メモリーカード大手サンディスクは22%以上の下落となった。
半導体関連の大手企業30社で構成されるフィラデルフィア半導体株指数は、12%以上下落した。
米富豪イーロン・マスク氏が率いる宇宙開発企業スペースXの株価は8%、電気自動車大手テスラは11%近く、それぞれ下落した。両社の時価総額は5日だけで、合わせて3000億ドル(約47兆円)以上減少した。
マスク氏はこれまで、約4億5000万ドル(約710億円)を投じて、共和党の選挙活動を支援してきた。このうち少なくとも4500万ドル(約71億円)は、共和党の牙城テキサス州の連邦上院選に出馬した共和党のケン・パクストン候補への支援に充てられた。しかし、3日夜には民主党のジェイムズ・タラリコ候補の当選が確実となった。
アップル、エヌビディア、テスラなど、いわゆる「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる米テクノロジー大手7社の時価総額は、わずか1営業日で計1兆ドル(約158兆円)が消失した。
株価下落の流れは、アメリカのほかの主要指数にも広がった。米主要500社の指数S&P500種は4.4%下落して取引を終えた。ダウ工業株30種平均は、前日の上昇分を失い、3.4%以上下落した。
ナスダック総合指数は下落幅は特に大きく、市場専門家らが「調整局面」と呼ぶ水準に入った。これは、株価指数や企業価値が直近の高値から少なくとも10%下落した状態を指す。
投資会社ウェルス・クラブの主任投資ストラテジスト、スザンナ・ストリーター氏は、ナスダック総合指数とS&P500種の急落が、ほかの市場にも波及していると指摘した。
「AI関連株をめぐる新たなパニックが、ウォール街を襲った」と、ストリーター氏は述べた。
「AIインフラに投じられた巨額資金が、投資家が期待するほどの利益を生み出さないのではないかという懸念と、データセンターの建設が急激に減速するかもしれないという見通しが合わさっている」
投資銀行サクソの主任投資ストラテジスト、チャル・チャナナ氏は、AI分野における優位性の確保は依然として、民主党と共和党にとっての優先事項だとしつつ、データセンター建設の認可や、環境への影響、電力料金に対してより厳しい目が向けられれば、プロジェクトの遅延やコスト増加につながる可能性があると指摘した。
「AI開発を支援することと、どんなコストや速度でもインフラの拡大を容認することは別問題だ」
テクノロジー業界のリーダーの一部からは、中間選挙でデータセンターへの反発が広がったことは予想外だったとの声が上がっている。
AIチャットボット「チャットGPT」を開発した米企業オープンAIの社長で共同設立者のグレッグ・ブロックマン氏は、データセンターに対する有権者の反応に誰もが驚いたはずだとし、地域社会の理解を得るためにさらなる取り組みが必要だとの考えを示した。
ブロックマン氏は4日夜、カリフォルニア州ナパで開かれた米紙ウォール・ストリート・ジャーナル主催の技術会議で、「今年に入って、我々の方針は大きく変化した。サンフランシスコにいながら、テキサス州やジョージア州、そのほかの地域にインフラを構築しようとする際、『これは素晴らしいものになる』とソーシャルメディアに投稿するだけでは不十分だと気がついたからだ。実際にこれらの地域に身を置く必要がある」と述べた。
メタのディナ・パウエル・マコーミック社長は、業界はAIを「いいアイデア」として売り込むことにもっと力を入れるべきだと述べた。
マコーミック氏は4日の技術会議で、「我々はこのことを、2倍、いや3倍伝えるよう取り組む必要があると思う」とした。
中間選挙を通じた直接的な影響に加え、一部の投資家からは、AI関連株がバブル状態にあり、今後調整が必要な局面を迎えるのではないかとの懸念が浮上している。
(追加取材:リリー・ジャマリ)